2015年10月31日

藤田嗣治のこと 2015.10.31

 画家藤田のことは、これまでおりにふれて述べてきた。国立近代美術館では12月13日まで彼の戦時下の作品を含めて同館所蔵の藤田ものを一般公開している。
 暑い盛りから今日まで、何回同館に通ったか。日曜日は無料とあって、賑わうが、平日はゆっくり鑑賞できる。やはり圧巻は「アッツ島玉砕」の絵だ。開館から閉館近くまで見つめていた時もあった。そこで、いろいろなことが判ってきた。彼が占領軍の嘱託として戦争記録画を集め、提出したことは周知のとおり。この時、彼はサインを書き直している。このことも何回か触れた。この行為は「改ざん」であろう。占領軍に提出された戦争記録画は、これからは国際的に鑑賞されるのだから、国際的に通用するサインにするのだと、書き直している現場に立ち会った女性に彼は語ったという。藤田のことはいずれ書くつもりで関連資料を随分集めた(戦時中の私信も何通かある)。しかし、この女性の存在は知らなかった。それはともかく、藤田はサインだけを描き直したのではなく、ほかにも加筆しているというのが私論だが、いずれにせよ、現在、藤田の「アッツ島玉砕」を論じることは、戦時下の「アッツ島玉砕」を論じることではなくなっていることに留意する必要があるだろう。もうこの世に戦時下の、あの「アッツ島玉砕」の絵は存在しないのだ。
 絵を眺めていて、これまでは画面中央に描かれている軍刀を振りかざした兵士が「山崎部隊長」と言われていたが、そうじゃないように思えてきた。左寄りの後方に黒い影で描かれているのが部隊長のようだ。
 もう一つ気づいたことは、藤田の改ざん行為が、この絵だけではないことだった。ほかの戦争記録画にも加筆している。
 折しも、今夜(10月31日)、藤田の肉声を録音したものがみつかり、放送するという。彼の肉声を聞くのは初めてだから期待している。
posted by 櫻本富雄 at 17:26| Comment(0) | 空席通信・余話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする